前回記事で言及していた、進化生物学者である長谷川英佑著の社会性昆虫の最新知見に学ぶ、集団と個の快適な関係「働かないアリにも意義がある」について、書評のような感想文とはいうよりは要約としてまとめましたので共有します。
要約に関しては、個人的なアレンジも入っておりますので、正しい記述を知りたい方は原著をお読みください。
- 作者: 長谷川英祐
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/06/14
- メディア: 文庫
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要点
- 働かないアリは、短期的な利益に結びつかないが、長期的な持続可能性に貢献する
1. 7割のアリは休んでいる
7割ほどのアリは巣の中で何もしていない
道を間違えるアリが交ざっているほうが、エサを効率よくとれる場合がある
2. 働かないアリはなぜ存在するのか?
刺激に対する反応閾値の違いによる個性があり、その個性によって、組織体で見たとき、反応量(=仕事量)に応じて柔軟に労働力を増減できる
働かないアリは鈍いだけで、働きたくとも働くほどの仕事がないだけ
過労死のような疲労の蓄積を考えると、働かないアリのいる非効率なシステムのほうが長期間存続できる
3. なんで他人のために働くの?
血縁選択説によって、血縁を助けることが自分の遺伝子を将来に多く残せることになるため、ダーウィンの進化論に矛盾しない
群選択説によって、群れることで相乗効果が働き、間接的に血縁もしくは種の存続につながるため、利他的行動が生まれる
人も滅私奉公により、将来の報いを期待する生物としての進化
4. 自分がよければ
アリにも人間にも、組織には働かないで自分の利益を追求するフリーライダーがいる
フリーライダーばかりの組織は滅びるため、フリーライダー自体も滅びるが、感染率が強ければ別の組織に移動できフリーライダーだけ生き残れる。しかし、感染率が強すぎると種全体を滅ぼす結果となる。 そうならない場合、社会全体でフリーライダーは一定に保たれる。
5. 「群れ」か「個」か、それが問題だ
群れることによって、捕食回避・並列処理のメリットがある一方、標的になりやすい・伝染病が流行ると全滅といったデメリットも存在する。
組織化して短期的な効率を追求する場合、組織自体の持続可能性としては、全滅のリスクが高まるためにトレードオフの関係にある
6. その進化はなんのため?
どのような進化が起こるかの予測は、理想的な集団でしか成立しない
理論には必ず前提となる仮定があるので、仮定が成り立たない場合、その理論は役に立たない
短期的な損得じゃない幸せがあると思うからこそ、面倒くさい人生を生きる価値がある
無駄を愛する人間
無駄を愛するからこそ、長期的な繁栄があるのかもしれない