社長失格は起業における失敗をリアルに描いたものです。
著者自身の起業体験談を赤裸々に語っているのが特徴的です。
とりわけ若い人は、起業のよい面ばかりを見る傾向があり、
そのような人が「現実」を知る上で有効となる本といえます。
しかしながら、本書の著者も運のいいほうだと思われます。
偶然に出会った事業対象が時代の流れにあうものばかりであったからです。
そこで自分の能力を過信してしまったところもあるのでしょう。
能力的にはよくいるタイプなのではないでしょうか。
頭はいいほうで、その上に運が味方することで自信をつけ、
恐れ知らずに勇猛果敢になっていく。
成功する起業家とはそういうものだとも思います。
しかしながら、「過信」することで失敗する。
それでも、このような本を書くことで失敗をリカバリーするところは起業家に向いている点でもあります。
この起業におけるリアルな中身は、本書を読んでいただければ疑似体験できます。
貸し渋りと返済を迫る銀行とのやり取りや、倒産の危機にある社内の混乱ぶりなど、うまく描かれています。
起業を考えている人は、このような浮き沈みの人生が幸せかどうかを考え、もし別の道のほうが幸せだと感じるなら、そこであきらめるのも「賢明な選択」だと思います。
今の時代、起業でなくても自由かつ豊かに生きる方法はいくらでもあるのだから。
著者は同様の素材で複数の本を書き起こしているが、内容はほぼ同じなので、読むのは本書で十分です。
起業を目指す方は、読んで損はない一冊と言えます。
たぬきちも「リアルな追体験」として勉強になるとともに、その体験を楽しめたのでコストに見合う効用であったように思います。